日々ザッキ。

英語が生業。ここからもどんなことができるのか、探索中。

読書メモ 「漁港の肉子ちゃん」西加奈子

前々から「読みたいリスト」に入れていた本。確かピースの又吉さんがおすすめしていた。ブックオフで100円でした。

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北の港町。焼肉屋で働いている肉子ちゃんは、太っていてとても明るい。キクりんは、そんなお母さんが最近恥ずかしい。肉子ちゃん母娘と人々の息づかいを活き活きと描いた、勇気をくれる傑作。

 

西さんの本、読み切ったの初めてかも(「サラバ!」も上巻しか読まなかった)。基本は平凡な日常を描いていて、肉子ちゃんが豪快で温かい人柄なので、気持ちよくすいすい読み進められる。ただ、途中から「実は色々なことが語られていないんだろうな」という感じがしてくる。小学生の女の子が主人公で、その子の一人称で書かれているので、語られ方が主観的。主人公が気づいていない、日常の裏には色々な秘密が隠れているんだろうな、という雰囲気がずっとある。全くつながりの無さそうなマキさんと肉子ちゃんが「マキちゃん」「肉子ちゃん」と呼び合っていて、実は主人公が知らないところで交流がありそう、というようなシーンからも感じられる。

ラスト近くで真実が語られるところは、主人公の一人称ではないので、そこだけ異質に感じられて、種明かしという感じ。この本の紹介で「みんな、それぞれで生きている。それでいい。圧倒的な肯定を綴る、西加奈子の柔らかで強靱な最新長編。」とあったが、適切な表現だと思う。肉子ちゃんや、この漁港の町みたいに、受け入れること、肯定すること、ある種の鈍感力は幸せに生きていくうえで大切なんやろうな。

焼肉のミスジとミートスパが食べたくなる。